胃食道逆流症は命を脅かす病気ではありませんが、胸焼けなどのつらい症状によって日常生活が損なわれる場合が多いです。
適切な診断と治療を行うことが大切です。

■胃食道逆流症(いしょくどうぎゃくりゅうしょう)について

胃食道逆流症(いしょくどうぎゃくりゅうしょう)とは、いちど胃の中に入った物が食道まで逆流することで胸焼けなどの様々な症状を引き起こす病気です。
胃の中には食べ物を消化するために強い胃酸が出ています。
胃には胃酸で自らを溶かさないための粘膜がありますが、食道には胃酸から保護する粘膜がありません。
そのため逆流してきた胃酸の影響で傷ついたり不快な症状が起こります。
食後に胸焼けが起こったり、胃液が込み上げてきて酸っぱい感じがするなどの症状がある場合は胃食道逆流症(いしょくどうぎゃくりゅうしょう)の可能性があります。
日本では5〜10人に1人が胃食道逆流症(いしょくどうぎゃくりゅうしょう)にかかっているといわれています。




■逆流性食道炎と非びらん性胃食道逆流症

胃食道逆流症には逆流性食道炎と非びらん性胃食道逆流症の2つのタイプがあります。
びらんとは皮膚や粘膜などに出来る赤くただれた部分をいいます。
非びらん性胃食道逆流症は食道にびらんが無いため、長い間逆流性食道炎の軽症型と思われてきましたが、症状の強さなどは逆流性食道炎とほとんど差がありません。
非びらん性胃食道逆流症は食道が過敏になっているため、弱い酸の刺激でも胸焼けなどの症状を起こすことがあります。
また非びらん性胃食道逆流症は胃酸の逆流がなくても、食道の食べ物の送り出すぜんどう運動の問題があったり、精神的な要因によって症状を来たすことがあります。
炎症がなくても強い症状を引き起こすので適切な治療が必要になります。
逆流性食道炎は高齢者や肥満の人にみられ、非びらん性胃食道逆流症は若い痩せ型の女性にみられる傾向があります。
日本人の胃食道逆流症の約60%が非びらん性胃食道逆流症となっています。

■胃食道逆流症の原因

食道と胃のつなぎ目の外側には下部食道括約筋(かぶしょくどうかつやくきん)という筋肉がついています。
下部食道括約筋が食道の下の部分を締め付けることで胃の中の物が食道に逆流しないようになっています。
胃にある程度食べ物などが溜まってくると食道を締め付けていた下部食道括約筋が緩み、胃に溜まった空気を外へ出そうとしてゲップが出ます。
このとき空気と一緒に胃の中に溜まった胃酸も逆流してしまうことがあります。
この逆流が頻繁に起こるのが胃食道逆流症の主な原因になります。

■胃食道逆流症になりやすい人

・食べ過ぎや早食いの傾向がある
・食べてすぐ寝る
・揚げ物などの高脂肪食が好き
・アルコールや喫煙の習慣がある
・肥満気味
・前屈み姿勢や猫背になりがち

●食べ過ぎや早食いは胃食道逆流症になりやすい
食べ過ぎると胃が食べ物で大きく膨らみます。
またよく噛まずに飲み込むと食べ物と一緒に空気も飲み込んでしまいます。
すると下部食道括約筋が開きやすくなって胃酸の逆流を引き起こすようになります。

●食べてすぐ寝ると胃食道逆流症になりやすい
食べてすぐ寝ると食べ物を消化しようとして胃の中に多くの酸が溜まり、横になることで胃の中の酸が食道に逆流します。
その酸が食道の中に長時間溜まることによってひどい炎症を起こすことがあります。
できれば寝る3時間前には食事を済ませるようにした方が良いです。

●高脂肪食が好きな人は胃食道逆流症になりやすい
天ぷらやとんかつなどの揚げ物などに含まれる脂肪を多く摂取すると胃酸が多く分泌されます。
さらに下部食道括約筋を開きやすくする消化管ホルモンを分泌させて胃酸の逆流が起こりやすくなります。

●アルコールや喫煙は胃食道逆流症になりやすい
アルコールや喫煙は食道を刺激するだけではなく、下部食道括約筋の働きを低下させてしまいます。

●肥満気味の人は胃食道逆流症になりやすい
内臓脂肪が蓄積される内臓肥満の人は、内臓脂肪によって腹圧が上昇して胃を圧迫することで逆流が起こりやすくなります。

●前屈み姿勢や猫背の人は胃食道逆流症になりやすい
デスクワークなどの前屈みの姿勢や猫背は、お腹全体が圧迫されて逆流が起こりやすくなります。

■食道裂孔ヘルニア(しょくどうれっこうへるにあ)

前屈みの姿勢や猫背を治そうとすると食道裂孔ヘルニア(しょくどうれっこうへるにあ)に注意が必要です。
横隔膜には食道裂孔(しょくどうれっこう)という穴が開いていて、ここを食道が通っています。
通常、食道裂孔の位置には胃と食道のつなぎ目があります。
食道裂孔についている下部食道括約筋が食道の開閉を行っています。
しかし前屈みの姿勢や猫背を続けていると、お腹全体が圧迫されて胃全体が押し上げられてしまいます。
すると胃の上部が食道裂孔をひろげて横隔膜の上にずれ上がってしまい食道裂孔ヘルニア(しょくどうれっこうへるにあ)になってしまいます。
食道裂孔ヘルニになってしまうと胃と食道のつなぎ目が開いたままになってしまい、胃食道逆流症が治りにくくなってしまいます。



■胃食道逆流症の治療法

・生活習慣の改善
・薬物療法

●プロトンポンプ阻害薬
胃酸の分泌を強力に抑えることができます。
始めは8週間継続して使用することが決められています。
食道に炎症がみられる逆流性食道炎の人の約8割の人に症状改善がみられます。
プロトンポンプ阻害薬は胃酸を抑える働きがありますが、胃液の逆流を抑える働きはありません。

非びらん性胃食道逆流症に対する薬物の効果は約5割といわれています。
プロトンポンプ阻害薬が効かない場合は、量を増やしたり、飲む時間を変えたりします。
またプロトンポンプ阻害薬にはいくつかの種類があるので種類を変えたりします。
さらには他の薬を併用したりします。

胃食道逆流症の影に他の病気が隠れている可能性があります。
精密検査などをして他の病気の可能性も検査します。

プロトンポンプ阻害薬で症状が改善した後に中止すると、6ヶ月間で83%の人にまたつらい症状が起こるとされています。
再発を繰り返すと合併症を引き起こすこともあります。
食道の炎症が進み重症化して潰瘍になると出血を引き起こすことがあります。
また潰瘍が深くなったり食道全体に及ぶと潰瘍部分がひきつれて食物の通りが悪くなる狭窄(きょうさく)が起こることがあります。
さらに食道が胃酸にさらされ続けると食道粘膜が胃の粘膜に変化してバレット食道という状態になることがあります。
バレット食道自体は痛みなどの症状はありませんが、稀に食道腺がんが発生することがあります。
このような合併症を防ぐためにも継続的にと治療を行うことが大切になります。

プロトンポンプ阻害薬は長期に服用しても副作用はほとんどなく安全性が高いとされています。
ただし医師の指示に従って必要最低限の量を使用することが望ましいです。

■胃食道逆流症の治療の名医(2017年1月時点)

愛知医科大学 消化管内科 教授
春日井 邦夫(かすがい くにお)先生
食道の疾患の診断と治療のエキスパートです。