ボツリヌス療法によりボツリヌス菌を筋肉に注射することで脳卒中発症後のリハビリの改善効果が6ヶ月を過ぎても可能になりました。




■脳卒中でもリハビリで改善する可能性がある

脳卒中や脳梗塞などによって手足などに麻痺が残った患者はリハビリを行います。
これまではリハビリを行っても6ヶ月を過ぎる頃から改善の効果は低くなっていました。
しかし最近の治療では、患者の状態によっては数日で麻痺した手足を動かすことが出来るようになってきています。
脳卒中や脳梗塞になってから何年経っても改善している例がどんどん出てきているそうです。
麻痺改善の可能性がある人は、推定119万人いると言われています。

■脳卒中のリハビリの6ヶ月の壁

脳卒中を発症すると患者はリハビリを始めます。
しかしきちんとリハビリを続けていても改善が留まる時期が訪れます。
それが6ヶ月の壁です。
ほとんどの患者は6ヶ月を迎える頃になると症状改善がパタリと止まってしまいます。
リハビリを始めて6ヶ月までを回復期といい、6ヶ月からは維持期と呼ばれます。
脳卒中による入院期間は医療制度で最長180日までと決まっています。
それ以降は退院して訪問サービスやデイサービスでリハビリを続けて下さいと言われるそうです。

■脳の機能回復には6ヶ月の壁はない

脳卒中などが起こると脳細胞の一部が壊死します。
壊死した脳細が蘇ることはありません。
ただし周りの細胞が代わりをつとめてくれるようになることがあります。
周りに神経細胞が伸びて神経ネットワークが復活します。
損傷の度合いにもよりますが、脳の機能回復には6ヶ月の壁はありません。

■脳は回復するのに麻痺が残ってしまうのは

脳から脊髄へは普通の神経細胞に比べて特に長い神経細胞が通っています。
脳から出た指令はこの神経を通って筋肉に伝わりますが、指令は一気に筋肉までは届きません。
脊髄から先は別の神経がつながっています。
この神経の連携で筋肉が動きます。
脳卒中が起きると、脳のダメージとともに神経もなくなってしまいますが、周囲の短い神経が長い神経の代わりに指令の通り道を作ります。
しかし指令が遠回りするため弱くなってしまいます。
ここでリハビリを行えば少しずつ近道を見つけようとします。
リハビリをがんばればがんばるほど指令がどんどん効率よく流れ、身体が動くようになっていきます。
発症から時間が経過すると、神経細胞はへとへとになってきますが近道探しは止めません。
あと少しで筋肉につながっている長い神経に届きそうになりますが、最後の最後で上手くつながることができません。
別の神経とつながってしまい、その間を何かの指令がすごい勢いで流れている状態になってしまいます。

不意に熱い物が手に触れた時、この情報はまず脊髄へと送られます。
すると脊髄が筋肉に縮めという命令を送り、筋肉が縮んで手が動きます。
この時脳は介在していません。
熱い物が触れた時、筋肉から信号が脊髄へ送られ、脊髄から脳へ送られますが、そこで判断して筋肉よ縮めという指令を送っていたのでは火傷をしてしまいます。
そのため筋肉から脊髄へ、脊髄から筋肉へ一瞬のうちに指令が送られ手が縮みます。
あらかじめ熱い物に触れると知っていると、何かに触れた時その情報は同じですが、それと同時に脳からもコントロールの指令が来て、脊髄からさらに筋肉へと伝わって腕が縮みます。
しかし脳卒中になると、脳から脊髄はの長い神経がなくなるので、脳からのコントロールがなくなります。
すると脊髄から筋肉へ信号が送られ縮み、さらい筋肉から脊髄へ信号が送られ続けてしまいます。
そして次第に暴走していき、筋肉が固く固く収縮してしまった状態になってしまいます。
さらにこの暴走をずっと繰り返しているうちに他の神経とつながらないようになっていってしまいます。
それが6ヶ月の壁の正体です。



■反射が暴走する原因

私達の身体は、筋肉が伸び過ぎると危険なので縮もうとする仕組みを持っています。
私達の筋肉の中にはバネのような形をした筋紡錘(きんぼうすい)と呼ばれるものがあります。
この筋紡錘(きんぼうすい)がセンサーの役割を果たしています。
筋肉が伸び過ぎると危ないため、縮めという信号を送ります。
しかし脳から脊髄への長い神経がなくなると、この筋紡錘(きんぼうすい)に異常が発生します。
いつも敏感な状態になり、やたらめったら縮めという合図を送るようになってしまいます。

■ボツリヌス療法の薬

ボツリヌス療法とは、ボツリヌス菌の出す毒素を1000分の1に精製したものです。
脳卒中後の麻痺にも認可され、保険適用にもなっています。
1週間ぐらいで効果が出始め、1回の注射で3ヶ月ほどの効果が持続します。
反射の暴走を抑えるだけの薬なので、筋肉がやわらかくなった状態でリハビリを一生懸命行い、神経の結びつきを作ってもらわないといけません。
脳卒中の6ヶ月の壁がなくなり、リハビリの効果が期待できる状態になります。
脳卒中発症後、何年経過しても、高齢者でも効果は期待できます。
副作用としては、注射した場所が痛んだり、筋肉がだるくなることがあります。
薬を筋肉に注射すると、脊髄への神経の働きを弱めます。
すると縮めという指令もなくなるので、筋肉の収縮が緩んできます。
すると暴走状態がここでいったん止まり、脊髄から筋肉へ送る神経が他の神経とつながるようになり、脳からの指令が筋肉に伝わるようになります。

■脳卒中のリハビリの第一人者(2012年6月時点)

東京慈恵会医科大学 リハビリテーション医学講座 教授
安保雅博(あぼまさひろ)先生

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